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2024-08-18

標高100m以下の峻溪 荒川・柳沢〜女川下降

2024.8.18

2024お盆最終日 僕らは血迷った。

関川村 清流荒川の下流域 朝日前衛の末端 羽越国境とも呼ばれ、県境すら不明瞭なこの山域は沢登り的にも謎が多い。

羽越国境は、女川や長津川といった中規模河川を中心とし、標高7〜800mの薮山が取り囲んでいる。

登山道があるのは光兎山くらいだろうか?こんな薮山でも山菜採りや釣り師、山師に使われてた古道が多数あるらしい。 正直全然知らない山域なのだが、キラリと光そうな沢を見つけた。

荒川・船岩ダムの少し下流で荒川と合流する柳沢。 この辺の沢は「流れに逆らう」が最も参考になるが、遡行記録はWEBでも書籍でも調べうる限り見つからず、完全な謎沢。

この柳沢は、地形図的に中間部に顕著なゴルジュ地形を擁しているかもしれない…
海抜100m以下からはじまる沢が面白ければ、これはロマンじゃないか、夏休み最後の日に都合があった団栗林権蔵先生、ばにこ女史と共に調査遡行することになった。

この沢は下山ルートを見出すのが難しい。どうしようかと悩んでいたが、北側の女川を降っちまえばいいやと信じられないルート採りをすることになった。普通に考えて日帰りでは厳しい距離だが、どうなる!?

バニ子さんと女川林道の近くで待ち合わせ。女川林道は全然奥まで入れなかったので仕方なくゲートまでにデポ。 権蔵教授の待つダム近くのもしもしピットへ戻る。

荒川の渡渉
いい感じの滝が続く
すぐにゴルジュっぽくなった

この山行は荒川の渡渉から始まる。

荒川の下流域はどこもダム湖か深いトロになっていて渡渉ポイントはごく僅かだ。都合よく柳沢の上流150m付近は、この一帯で唯一の瀬になっている。水深は腿くらいだが、川底の岩が途轍もなくヌメり、かつ水圧もあ流ため少しでも増水してると危険。

アブを纏い柳沢に入渓。 最初は古い堰堤が3基あり、どう見てもただのボサい薮沢である。

しかし、次第にゴルジュっぽくなり、ちょい泳ぎやシャワーを浴びて登る。これはすでに当たりの予感…

第一の大滝! 素晴らしい
端っこでも朝日の片鱗

何が出てくるのかゾクゾクしていると、Co150mには素晴らしい第1大滝がかかり、その姿に唖然としてしまう。名もなき大滝だが、ゴルジュの中30m近い落差をスッと落とす名瀑 左岸からぐるっと高巻き。

この滝を皮切りにゴルジュが続き、滝も多く一筋縄では行かない。団栗林先生の尋常ならざる登攀力が光りまくった。

暗い陰鬱なゴルジュと花崗岩の煌びやかな明るさが交互に現れ、めくるめく渓相の変化に心踊る。

第二の大滝
スゴすぎな

Co240m付近では第2大滝 これも立派な直瀑でV字谷の中を断ち割るように注ぎ、周囲はミストで充満する。

空中に噴き出すようなその滝姿! 人里近くの藪谷に、こんな滝が眠っているとは…!

快適遡行
ナメもあり〼
シャワーが多く、夏向けの沢

大滝の高巻きは意外とすんなりといった。この先はしばらく快適遡行。 ゴルジュにナメ、一切日暇を与えない。素晴らしい沢じゃないか。

第三の大滝は倒木地獄
第4の大滝はめっちゃ綺麗
横松沢を下降する

Co350mでは流木の墓場みたいな15mの第3大滝が出現、形は美しいがなんせ流木の堆積が酷い。なぜここだけこれほど流木が溜まるのか!?
この巻きは悪い、右岸からの枝沢との中間尾根は斜度のきつい木登りで上まで行き、懸垂下降で沢に復帰。

するとさらに、Co400付近に4段35mの美しい大滝が現れる、これは滝のすぐ脇を簡単に巻き登った。

これで大滝は終わったが、水流がか細くなっても滝は続く。途中でクマが目の前に現れてびっくり仰天。

標高が低いとはいえ、実に山深い。 

息を切らして上り詰めると、目の前にはピラミダルな光兎山が望める。

ここからは女川へ降るため、横松沢を下降する。 横松沢はヌメヌメだが大した滝もないと思っていた…

横松沢も滝が多く、下降に手こずる
女川出合近くにはゴルジュもある

順調に横松沢を下降するが、co450~370mまでゴルジュで何度か懸垂下降を要して時間がかかる。

次から次へ飛び込んだり変なクライムダウンで疲労がやばい。やっとの思いで女川出合に辿り着いた時にはすでに16時を回っていた… 

おいおいこれ日が暮れる前に女川降りきれるかよ!? 焦っても、もう来てしまったものは仕方がない。

女川を泳いで下降
泳いで泳いで…

女川の下降はとにかく泳ぎまくる。野太い女川はまるで早出川のような雰囲気。

いい雰囲気なのだが泳いでも泳いでも全然進まない!もう景色を楽しむ余裕なんてなく、無心で泳ぐ。 夕方になってもアブの活性は高くて、水面から出ている顔面に向かって集中砲火を浴びる。エッグい!

無心で泳ぎ続ける
美しい3段の滝 もうすぐ終わる。

女川は水量豊富な美しい沢で、時間に追われずに堪能したかった…

17時を過ぎてもなお泳ぎ続けており、このままではヘッデンゴルジュ下降となる、どうしてもそれは避けたい、無我夢中で降る降る降る

18時過ぎ、矢木ノ沢出合いにようやく辿り着くが、林道への経路がわからず、異形の砂防堰堤付近をうろうろ。
上流へ戻って矢木ノ沢を少し入ったところに縄梯子発見 釣り師の工作物はすごいなあ。

段丘までかなり危険な釣り師経路で林道に出る。

ふぁ〜。なんとかギリギリ明るい時間に沢を抜けた…

しかし闘いはまだ続いた。

林道に出ても、背丈を越える藪・藪・藪 女川は釣り師の出入りが頻繁かと思ったが、林道の様子から、下流部への出入りは相当少ない模様。
 地形図の道と破線の境界では、漆黒のトンネルが出てきて中はコウモリ地獄  
全くなんなんだこれは!!
数百匹のコウモリが飛び交う中をヘッデン灯して進む。コウモリとぶつかることはないが、目の前を飛び交い風が掠め、鳴声が反響するし、糞の臭いがめっちゃきつい。200mほどでこの地獄トンネルをぬける。

その後も藪はしばらく続いて、やっとこさ普通の林道っぽくなった… やっと解放されたか!?そこで、ふと足元を見ると今度はとんでもない量のヤマビル地獄 えっっっぐい量のヤマビルだ!! 東北で一番のヤマビル地帯かもしれぬ!
いちいち気にしてられないので、見なかったことにして、黙々と歩き続ける。

全員の疲労と精神力が限界に達したころ、デポした車に辿り着いた!!
時刻はすでに20時前、途中から何が何だかわからない1日だった。
駐車スペースでヒルを落とすが、出るわ出るわ
1人10匹くらい落としてばにこさんの車に乗り込む。
スタート地点のもしもしピットに戻ってここで着替えるが、まだヒルがポロポロでる、ポムチムはお腹、権蔵先生は腕や足が何ヶ所か噛まれて流血していた。

そして夏休みは終わった。

ヤマレコ記録

権蔵先生、ばにさんありがとうございました! めっちゃ楽しかったすね!

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