北ノ又川 芝沢左岐沢・右沢
2024.9.7~8
昨年、芝沢右岐沢を訪れた時に出合から見事な渓相を見せていた左岐沢がとても気になっていた。
そして左岐沢の右沢には、万年雪が残るスラブの伽藍と比高差200mを超える長大な滝があることがわかっていた。
あそこには一体どんな景色があるのだろうか?沢屋の基本原理である好奇心が爆発しそうなくらい左岐沢・右沢に焦がれていた。
同じく芝沢気になるオヂさんの中澤さんと、沢復帰戦のKCの3人で芝沢左岐沢・右沢を目指した!
中澤さんのYouTubeをご覧ください!!
ポムチムは5度目の北ノ又川、いいかげん見慣れてきたがいつ来ても水が綺麗だ。箱淵の巻や芝沢までの内容は目を瞑っても歩けるほど熟知している。
9月にもなると、北ノ又の水温は耐え難い。急ぎ足で芝沢出合いへ向かう。
芝沢に入ると、水温はマシになり泳いでも苦じゃない。岩盤が発達したまさに越後の溪たる渓相が続く。
陽が出ていれば眩いゴルジュだが、今日は曇り空で少し陰気だが、初の芝沢である中澤さんも、沢始めのKCもとても嬉しそうに遡行している。
左岐沢、右岐沢の出合いはとても綺麗だ。白く滑らかな岩床が広がり、休憩にぴったりだ。昨年遡行した右岐沢は相変わらず、いきなり登れない連瀑が見える。左岐沢はというとこちらも滝だが、カッチリとした岩で気持ちよく登れそうである。 じっくり休憩をとっていよいよ左岐沢へ入る。
左岐沢へ進むと滝に継ぐ滝。もう滝のオンパレード。本当にゴーロがなく、滝と釜、水路で完璧な構成。
岩はそれ以上ないくらいしっかりと堅固なもので、安心して登れるのが嬉しい。
ドーム状に囲まれた3m滝は右壁のチムニーに活路を求める。腐り切った残置は使えないので、中澤さんがカムをセットしショルダーの合わせ技で突破。 ここは水流際からも登れるようだ!
いよいよ10m前後の大きめの滝も出てきた! 岩の色がオレンジっぽくてカラフルだ〜
次は岩がまるでボディガードのように滝身を隠す20mの大滝。 ドーム状に囲まれた地形でスゴスンギ。
この滝はオレンジとグレーが混じっていてなんとも不思議な色味だ。 ここはぱっと見で右からバンドをトラバースしていくが、最後までフリーで行くのは危険と判断し、ロープを出してワンポイントカムのA1で繋いで進んだ。
大きめの滝は一旦終了。なおも快適かつ美麗な渓谷は続く。時にちょい泳ぎをしつつ遡行を楽しむと、先が開けて見えてきた。どうやら右沢出合は近いようだ。
右沢と左沢の水量比はだいたい1:1 トマの風やガイド本に記録のある左沢は滝で出合っている。
進む右沢は小滝がいくつか、いずれも容易に登れたと記憶している。 いよいよ壮大な右沢大伽藍が眼前に展開する。9月でも巨大な雪渓を残し、正面右沢本流は遠くからでも分かる悪相の連瀑帯がかかる。
一方で、登路と目星をつけていた左岸支流の200m大滝は水量チョロチョロ。最近は雨が降っていないからかなり減水しているようだ。 この水量だと、どうにも大滝には気が乗らないがとりあえず、直下まで行ってみることにしよう。
雪渓は本当に巨大なもので、雪渓の多い越後でも最大クラスの面積を持っているんじゃないだろうか。
幸にして雪渓が接する赤茶色のスラブは傾斜が緩く、てくてくと歩ける。やがて目論んでいた左岸支流大滝の真下に出た。水は流れているが、やはりしょぼしょぼとしている。
見上げながら、3人でどうしよっか〜と相談タイム。視界の隅で右沢本流の連瀑は手招いている。
しかし心の中では全員が同じことを考えていた。右沢本流一択だろと。
誰が言い出すこともなく、3人の足は右沢の連瀑に吸い込まれていった…
ちなみに左岸支流大滝は同月にtamoshima,たな夫妻によって登攀されており、真沢の白龍の滝と対をなす「蒼龍の滝」と名付けられた。
右沢の連瀑に向かうため、スラブをクライムダウン。雪渓の末端から滴る水滴が頬に落ちる。連瀑最初の滝は快適に登れそうだ。 すると、先行していた中澤さんが何か叫んでいる。 聞くとゴープロを落としてしまったようだ。 周りを探すと釜に沈んだゴープロを発見!良かった良かった
ついで明らかに大きな25mの大滝。 右沢連瀑の核となる滝だ。 KC がロープをつけて右壁から登攀 中間で滝を横断するところが難しそうだ。 今期、ほぼ沢はじめと言えるKCだが、やはり経験値が違う。余裕の登攀で登り切った。
大滝の上も滝が続くこと続くこと。フリーで登れたり、巻くにしてもそれほど悪くはない。
遠目の印象とは違い、案外快適な連瀑なのであった。
連瀑を行き詰まることなく超えると、ボロい岩盤に囲まれた10m級の滝 左岸から回り込んで巻くと、ボロっちい二俣。 右の流れが本流か? 急勾配でボロボロゴーロとなっている。
右岸側に湧水のある平場があり、ここで幕営。 薪もあっていいところだった。
翌日の明け方、ちょっと降って雨がタープを叩く音で目を覚ます。
中澤さんは雨に敏感なので、なんか言ってたがすぐ止んでくれた。
2日目はガスが立ち込める中、スタート 早々に水は枯れて、稜線まで長いスラブ登りが始まった。
本当に稜線直下までスラブは続いており、最後にほんのちょっとの藪を漕ぐと、檜廊下の縦走路に飛び出した。
ここから駒まで、言うまでもない激登りが待ち構えていたのだった。
左岐沢は右岐沢よりも圧倒的に快適だし、綺麗だし、越後らしさが詰まった正真正銘名渓だ! 近年記録がほとんどない沢だが、隣の滝ハナ沢にも勝るとも劣らない内容。素晴らしいの一言。
そして記録のない左岐沢・右沢だったが、巨大雪渓に大スケールのスラブ側壁、圧巻の連瀑 こんな沢がまだ眠っていたなんて。。藪も薄くて言うことなし。越後の沢が好きなら絶対に行くべき沢だった。
KC、中澤さん、今回もどうもありがと〜!!