朝日連峰 東大鳥川・西ノ俣沢
2025.8.23-8.24
朝日連峰の沢は主稜線に抜ける沢でなくとも美しく力強い沢が多い。連峰北部の伊東岳・大鳥池から発する東大鳥川の支流・西ノ俣沢は、マイナー12名山の化穴山から流れる沢で、他の主稜線へ詰める本流筋に引けを取らない大水量とゴルジュをもつ渓谷だ。
そして険しいゴルジュの先には、まるで桃源郷のように穏やかな河原が続くという変化に富んだ魅力的な沢だ。
豊野則夫著の「朝日・飯豊連峰の沢」にも記載されている沢だが、近年の遡行者はとても少ない渓谷だ。
同行予定だったKCは、前日に行っていたザクロ谷でHPを使い果たしてしまったので、モーリーさんと2人で行くこととなった。
8/23 泡滝ダム(6:12)-上ノ河原(13:10)-水上沢Co880幕営地(14:50)
泡滝ダムで入渓準備をし、アプローチゼロで西ノ俣沢へ入渓。 長い林道や山越のアプローチが多い朝日でこんなに簡単に入渓に漕ぎ着けるのはありがたい。
そして何より驚いたのがアブが全くいないことだ。6月7月と記録的な渇水、酷暑が続き、8月に入ったら一気に気温が下がったためアブも消えてしまったようだ。そういえば、お盆の七滝沢も全く害虫がいなかったなぁ。
…ゴーロを歩くと早速ゴルジュっぽくなり、豊富な水量に負けじと進む。 左岸に大きな甌穴を持つ釜滝は泳いで取り付くもなすすべなく、右岸の灌木のある岩盤から巻く。モーリーさんがフリーで取りついていたが、めちゃくちゃ悪いそうなのでロープをな結んでもらう。フォローで続くとやっぱりめちゃくちゃ悪い。Ⅴ級くらいあるかも。
釜滝の先は落ち着くが、30分も歩けば旧魚止滝ゴルジュになる。 大きな釜に噴き出す旧魚止滝は左岸のルンゼから巻く。すると、すぐ上に15mはあろう直瀑がかかっており見事なゴルジュとなっている。
この15m滝が旧魚止滝の本体なのだろう。ゴルジュは手出し不能なので左岸のリッジでロープを出して登る。灌木まで逃げて、しばらくはトラバースが入る。見下ろす旧魚止滝ゴルジュには水線突破などありえない感じの滝が連続していた。
灌木と草付きの左岸トラバースを終えると水線を進める楽しいゴルジュステージ。
朝日の沢よろしく、めちゃくちゃ水が綺麗! じゃぶじゃぶと浸かり、時には泳ぎを交えて快適遡行だ!
金堀沢出合いは滝で出合い、非常に美しい。金堀沢は奥にも滝が続いているように見え、気になる沢となった。
沢はますます輝きを増していき、心臓の鼓動も高まっていった。
モーリーさんも久々の朝日に酩酊、今年は弁慶山塊の薮沢に注力していただけに朝日の闊達な沢に否が応でも興奮を隠せないようだ。
正面が大きな壁に塞がれて、沢が直角に左曲している。 ヒョングって噴き出す3m滝の先には絶望的な2条10mのネジレ滝が待ち受ける。 これは一目で不可能とわかる。
高巻きのラインはただ一つ。右岸のスラブを少し登って、緩くなった灌木帯から巻いていく。
ネジレ滝の落口に導かれるように進むと、かなり古めの残置スリングが垂れている。これを使って振子の要領で落ち口へ降り立つ。ここは万一しくじるとアウトなトラバースだった。
ネジレ滝の上はゴツゴツとしたゴルジュでネジレ滝ゴルジュと言える。小滝が連なるが、一癖二癖ある感じ。
ちょっとした河原を挟むと明らかに険しいゴルジュ、CS3m滝は瀑水の右からカムをセットして奮闘したり、空身で挑むもうまくいかない。
対岸へ取り付き、スラブバンドから越えようといくが、CS3m滝の上には突破など許さないと言わんばかりの8m滝が鎮座している。モーリー隊長に無理!と合図し、戻って左岸のルンゼから高巻くが、結構悪い。
ネジレ滝ゴルジュは先ほどの8m滝の上にも登れそうにない滝がいくつか連なっていて、割と長いこと巻き続ける。
灌木の切間に導かれるように沢へ降りると側壁はだいぶ緩み、やっと沢の中を進める。
ネジレ滝ゴルジュの終わりから最後のツバクロダイゼンまでは非常に快適。
随所の泳ぎがたまらなく爽快! にしても、モーリーさんのレッドカラーがめちゃくちゃ映えるわ〜
アドレナリン爆発! こんなに痛快な沢だとは思っていなかったぜ!
2段7m滝を超えると、奥に異様な岩壁が見え隠れ。いよいよツバクロダイゼンとご対面。
細く圧縮された水路の先には轟々とした10m滝が落ちている。この滝についてモーリーさんは取り付ければワンチャン登れるとの見解。まぁ、巻きましょうよと諭す。
右岸は岩盤のスラブっぽくなっているが、トポによると右岸巻きの模様。ルンゼから灌木に入ると、確かに緩傾斜が繋がっている。ツバクロダイゼンは10m滝の上に3つくらいの滝をかねている。巻き途中から覗くと、どれもワンチャンありそうな雰囲気だった。
誰かツバクロダイゼンの突破はいかがでしょうか? それに旧魚止滝ゴルジュもネジレ滝ゴルジュも核心部水線突破の記録はないでしょう、ゴルジュ愛好家の出番なのでは。
右岸トラバースから細流を横断すると、すんなりとツバクロダイゼンの上に降り立つ。最後は2m滝を一泳ぎで超えると、沢は一気に開け太陽が燦々と注いでいる。 どうやら全ての難所を超えたようだ!
高巻きのルーファイでハマらず進めたため思いの外、早めに上ノ河原へ抜けることができた。
上ノ河原はまさに楽園のよう。これまでの急峻なゴルジュが嘘のように穏やかな流れだ。
変則三俣を水上沢へ入ると浅いゴルジュとなるが、すぐに河原が現れて今夜はここで宴会とすることにした。
時刻はまだ15時前、たっぷりと薪を集める時間もあるし、どれ、久々の釣りでもしてみるか。
2.3年ぶりに竿を振るポムチム。 毛鉤を投げ込んだ瞬間に1匹釣れたが小さいためリリース。
先へ進み、また塩焼きサイズが釣れたのでいただくこととした。
モーリーさんは沢で宴会することが目的なようで、とんでもない量の肉や餃子、酒を担いできていた!
とにかく食って食って食いまくる。 下界よりもご馳走が出てきて笑うしかないw 岩魚もいい感じに焼けて、大満足の宴会となった。
そして真夏なのに、どういうわけか蚊の1匹もいない。こんな快適なことある?
暗くなり、見上げると過去一の星空が広がっていた。
8/24 水上沢Co880幕営地(6:20)-甚六山のコル(9:00)-源太沢出合(11:40)-泡滝ダム(14:00)
幕営地を出て、しばらく穏やかな水上沢を進むと巨大な雪渓が塞ぐ。丁度この雪渓が甚六山のコルに抜ける右岸支沢出合いのようだ。
雪渓の上から支沢をみるといきなりゴルジュになっているし、雪渓はスッパリ切れていて降りられない。
支沢右岸から高巻いて、灌木クライムダウンで降りていく。
支沢は意外と小滝が多く、割と楽しめる。はぁはぁ言いながら標高を稼ぐ。振り返ると秘峰・枡形山に向かう沢に50m近い大滝が見える。そして双耳峰が美しい枡形山…頂に立つことはあるだろうか。本当に奥深いぜ。
徐々に藪っぽくなり、甚六山南のCo1370コルは激藪。見晴らしの良い稜線を期待していたが、マジに薮。
そのまま、まっすぐ東甚六沢下降の段に移る。
東甚六沢は下降に適するとの記録通り、ぐんぐんと標高を下げる。が、Co840では大きな雪渓が立ち塞ぎ。かなりいやらしい残り方をしている。
左岸の草付きをトラバースし、滝で注ぐ支流の傍から懸垂下降で崩壊中の雪渓末端に降り立つ。
今にもさらなる崩壊を引き起こしそうな雪渓のため、足早に距離をとる。これで下降も一安心だ。
源太沢出合にはお昼前に到着。 今日はもう下山するだけなので、ちょっと寄り道で源太沢の連瀑まで偵察に行くことにした。
穏やかな河原からやがてゴルジュっぽくなり、何度も角度を変えていく源太沢。
小滝を登って進むと、遥か高さから連瀑の頂部が見えている。比高差は100m以上ありそうだ、ひょっとすると朝日連峰最大の連瀑なのでは?
奥まった空間で直角に角度を超えるところで連瀑の最下部が姿を現す。見えているのは下部2段で12m+40mと言ったところか。これだけでもデカいし、何より美しい! 最後に嬉しいオマケが見れてよかった。
モーリーさんは連瀑の上部が気になるようで、早速そのうち行く気になっていた。
確かに見てしまったからにはいつか行かねば…
戻って、源太沢を下っていく。ひたすらゴーロだが、距離はない。 やがて登山道に出て1時間ちょいで泡滝ダムへ無事戻ってきた。
西ノ俣沢は険しいゴルジュのルーファイが鍵となる沢だが、眼が眩むほど明るい名渓だ。ゴルジュと上部の穏やかな渓相のコントラストが素晴らしい。 今回のような一泊ショートコースも気軽でいいが、化穴山を踏んだ遡下降で繋げばより真価を増すことだろう。何にしても素晴らしい沢ですわ!
モーリーさんありがとうございます!






































