中ノ岐川 滝沢
2023.7.29〜30
GWに一緒に九州の沢巡りに行った江戸切子さんから今シーズン、中ノ岐川の滝沢が気になっている旨を聞いていた。今年は雪渓が少なそうなので7月になれば行けるだろうとタイミングを見計らっており、晴れそうな週末に声をかけてみたらOKとのことで久々の江戸切子さんとの活動となった。M氏も同行してくれて心強い。下山は隣の花降沢からの灰ノ又沢下降とした。
参考記録
湯之谷の道の駅で集合しまずは、シルバーラインから中ノ岐川の雨池橋まで向かうのだが記憶以上にクネクネ道だし、遠い。んで眠すぎ。
雨池橋近くのスペースに停めて準備にかかるも、、どうにも全員動きが鈍い 自分は睡眠時間3時間、江戸切子さんとM氏は東京から来てるのに1時間しか睡眠してないそうだ…
準備を済まし、だらだらと長い林道を歩き約40分 お目当の滝沢がナメで林道と出合っている。いきなりのナメに少しモチベが上がる。
もっさりもっさりと滝沢に入渓 朝早く、日が差さないためナメの美しさも半減だが、思った以上に長く続く釜・ナメがとても綺麗。
ナメの先には早速の大滝 右岸が発達した見事な滝、30mくらいはあるだろうか。この滝は下部がハングしており登れないが、上部は傾斜が緩い 左岸の樹林帯から巻き始め滝の上部へ至るバンドから滝身に移りそのまま直上Ⅲ ヌメりが少し気になった。
間髪入れずに、柱状節理の発達したゴルジュとなり、中には3m、6mと続き最後にはそこそこ大きい13mくらいの滝が立て続けに連続している模様。 先ほどの滝でウォーミングアップは整って動きを取り戻したため、連瀑をシャワー混じりで超えていく。最後の13m滝は右岸の草付きから小さく巻いた。
ゴルジュは依然続き、泳いで取り付く3m滝を楽しく越えると、右曲する所に明るい15m滝が現れた。一見、左壁から簡単に登れそうに見えるが…
ポムチムの悪い癖、見切り発車のノーロープで取り付くものの如何せんひどいヌメりだ。2/3ほど登ったところでどうにも一手厳しい箇所が出てしまった。後ろから来たM氏はこれを物ともせずに登りあっさりと滝上へ… M氏がロープを担っていたため、上からロープを投げてもらい事なきを得た… アリガトウ … この滝は最初からロープを出して登った方が良いですな。
15m滝の上はゴルジュ状から一転して、開放的な明るい渓相へと変化する。 快適な小滝やトイ状のナメがありとても楽しい。先には、大きく2段構成の40m近い大滝が迫る。上段は下部が傾斜が強いため、ロープをつけて登る。30mでは滝上まで届かず、流水左の潅木でピッチを切るが上部は緩く、ロープを解除して登った。 この滝の上もナメがあり、どこか牧歌的な風景に心酔。
この辺りだったろうか?遠くで雷鳴が聞こえたような?いやいやこんなに晴れてるし、飛行機の音だろう…
ナメ連続の最後は、下からは全く見えていない悪そうな14m滝で〆るが近づくと、右のルンゼ部分から意外とあっさり登れる。最後は落ち口を直接登るが、ここは高度感がありミスはできない。 この滝の上もすぐに8m滝が爽やか飛沫を上げている。 お昼ご飯をここで食べて先へ進む。
渓相は明るいが、ガレっぽくなりいくつかの小滝と柱状節理の側壁を見つつ先へ行く。と、Co1350付近で雪渓がどんと現れた。幸いだだっぴろい河原に雪渓があるだけで、何の問題もないがこの辺りで先ほどの雷鳴が本物であることが発覚する。
想定していた初日の泊地はこの辺りだが、どうにもウマい場所がない。時刻は13時過ぎだったか、雷鳴は多少気になるけども、時間早いし、この辺に「ここだ」という幕営適地もないから翌日の行程のはずだった花降沢へ乗越して、下降途中にテン場探しませんか?と提言
そうと決まらないまま、Co1420付近で登路である右岸の大スラブが現れる。 予想よりもはるかに巨大なもので、下部は20mほど垂直に近い滝だ。 この周りでもテン場を探すが、ない。 明らかに雷鳴は近づいているが、もはやこのスラブを登り切って花降沢側で探すほかないということになって、スラブに取り付いた。 下部の垂直な滝は、バンド状の切れ目があるがここは意外と悪かった。
すぐ上にも10m程度の傾斜の強い斜瀑があるが右から登れる。 その上はどこまでも続くスラブ 比高差200m以上はあるだろうか…果てしなく続くスラブに感心している間も無く、雷鳴は明らかにすぐ付近まで迫ってきてしまった。今すぐに雷雨がここにも到達するだろう、全員がそう確信した。
ここでもう限界を迎え、先に進むのを中断。スラブの中腹にある15m滝のすぐ下がちょっと広くなっているため、速攻でタープを張って、ビバーク体制に。 タープの下に潜ると、途端に超強烈な豪雨が襲う。無数の雷鳴が数秒ごとに轟き、内2発ほど雷光と同時に鼓膜をブチ破るレベルの炸裂音 すぐ近くに落雷したか!? これには本当に生きた心地がしなかった。
M氏と江戸切子さんは被雷した場合でも生存の可能性をわずかでも上げる策として、「靴のゴム底以外の身体部位を接地しない」「各々の間隔を取る」ということで実践。
そして江戸切子さんはここでまさかの確率論を展開、「この数秒で△発の落雷があったため、雨雲が通り過ぎるであろう1時間で〇〇発の落雷がこの周囲を襲うが、この広大な越後の空間で1/〇〇を引く可能性はごく僅かであるため、死亡する確率は限りなく低い…」それはそうだが、ポムチムはワンチャン死ぬかもしれない恐怖に震えるしかない。
そして雷どころじゃないことに、豪雨で大増水したスラブが鉄砲水のようになりタープ内部まで侵入。先ほどまでほぼ枯れていた滝は豪瀑と化し、タープの先1mまで迫っている。「これはマジでやばい!!」落雷よりも現実的な死がすぐそこにある! 全員荷物をすぐにまとめてヘルメットを被り、いつでも逃げ出せる体制に…
やばい状況は相変わらずだが、徐々に雨脚も弱まり、空も明るくなってきた。 しばらくは身構えていたが、明らかに雨雲が過ぎ去ったと思われ本当に安心した。スラブのため増水もすぐに収まった。 居心地は最悪だが、今日はここで寝るしかなく、激しく斜めった岩の上で一夜を明かすしかない。ほぼ一睡もできずに半ば発狂しかけた暁、夜があけた。
翌朝はよく晴れて非常に良いお天気となった。びしょ濡れの装備に着替えて、快適なスラブを進むと三俣となり、正面のスラブを進むと草付きに変わる、ほどなく草原に至る。コルからはほんのわずかな藪の先で花降沢右俣を降っていく。
最初は特に何もないか、滝があっても藪からクライムダウンが可能だったが、降るに従い大きめの滝が頻出する。本流の左俣に出会うまで2回(?)捨て縄を使った懸垂下降をしたと思う。
右俣に出合い、見事な大ナメをクライムダウンで降るとしばらくは極上の渓相が続く。
花降沢はあまり下降に適した沢でもなく、滝が多く続く。 残置があるのもいくつかあったが、捨て縄使ったのも含め全部で5回くらいは滝を懸垂下降をしたと記憶している。 中でも20m級の直瀑は30mロープ2本を使うことになり、予備として持ってきたロープが役に立ってしまった。
花降沢の下降には最後まで結構手こずりながら、やがて灰ノ又沢に出合う。ここからしばらくは河原だが、地形図の通りゴルジュが始まり、この下部のゴルジュはそこそこしっかりめのゴルジュで、夏だから飛び込んだり、躊躇なく泳いだりして降るが秋になると結構巻きが多そう。とはいえ、釣り師用の巻道があるような感じだったのでさしたる問題にならないであろう。
往きよりも多くのアブにたかられながら、中ノ岐林道に戻ってきて1時間ほど歩いて無事に雨池橋に戻ってこれた。
・所感・
沢の内容はかなり良かったけれども、雷雨の印象が強く 反省点も多く見つかった山行でした。
雷鳴が近づいたら行動をやめすぐに増水に耐えられる安全な場所でしのぐ。こんな当たり前のことができず、自分の楽観視した意見によってあわや大惨事になりかねない場面でした。大気が不安定な夏、皆さんも雷雨にはくれぐれもご注意を。
雷雨発生の検討にはこんなサイトがあると教えてもらいました。↓
https://www.imocwx.com/guid.php?Type=3
滝沢は短い沢だけれど、登れる大きめの滝が連続して現れ、随所のナメも綺麗です!最後の大スラブも豪雨がなければ爽快そのもでかなり良い沢でした。
花降沢の下降は滝が多く、手こずりました。 どちらかというと登った方が楽しい沢かもしれませんが、他の下降案のグミ沢かどちらかとなると花降沢の方がよっぽど良いと思いますね。
何はともあれ、全員無事でよかった〜 江戸切子さん、M氏ありがとうございました!