北ノ又川 大ビラヤス沢
2023.8.14-15
平ヶ岳から下山後に久々の天気予報を見ると、3日前の予報より台風は大分西側の方へ進行している模様で、後数日間は新潟周辺は天気が持ちそう… せっかく遠い越後まで(毎週のように来ているが…)来ているため、3日間の山行で疲れた体に鞭打って沢登りおかわりが決定。
ケーシは残念ながら腰の調子が今ひとつということで、そのまま中澤さんに付き合ってもらうことに。
行き先はポムチムが3年前からずっと気になっていた北ノ又川支流の大ビラヤス沢に決定!
参考記録:オタクは山が好き?_2002年 トマの風_2006年 ぶなの会_2012年
大ビラヤスを控えて、南魚沼の中澤さん家で畑作業を手伝ったり、家横にある冷たい山水を浴びたりして身体をほぐして過ごす。
8/14
朝は昨日までの疲労が抜けず、ぶっちゃけ結構体が重い。
銀山平で沢支度の準備しているとき、中澤さんは明らかに体調が悪そうに見えた。
6:00スタートで林道をちょっと歩いて、坪倉沢から沢に降りて北ノ又川に入渓 3年ぶりの北ノ又… 相変わらず水温は氷水のよう。
アブは危惧したほどおらず拍子抜け、もはやいないと言っていいレベル どうやら気温の低い早朝は活性がかなり低い模様。
北ノ又本流は記憶以上に河原が長く、結構歩いてようやく箱淵に。昨日までは箱淵も泳ぐ気満々でいたのだけれど、あまりの水温の低さ、疲労から泳ぐモチベは完全にゼロとなってしまっており、右岸の枝沢から草付きをちょっと登って段丘から巻くことに。10分程度の簡単な高巻きで、箱淵から続くゴルジュをパス。
ちょっとの河原で続くゴルジュは左岸巻きを交えると、対岸へ10mもない泳ぎ ここで水に全身浸かるもやはり痺れる冷たさ。箱淵は巻いて正解! 河原を歩いてちょっとで左岸から滝ハナ沢が出合う。北ノ又支流で最も高名なこの沢は今後の課題である。
その後も泳ぎと水圧の強い渡渉を繰り返し、芝沢出合いに到着 この芝沢も近年の記録は少ないが、北ノ又最大の支流で非常に険しい渓谷(これもめっちゃ行きたい) 中澤さんが寒すぎてカメラを向けると辛そうな表情ばかりしている。
芝沢を分けて厳しいゴルジュを左岸巻きでパスすると、いよいよ大ビラヤス沢の出合いは近いが、まぁまぁな距離を泳がされる箇所があり、中澤さんと絶叫しながら泳ぐ。
結構疲れて9:00ごろに大ビラヤス沢出合いに到着。大ビラヤス沢は出合いから滝になっており、右岸の岩盤から登りに行くが、思った以上にホールドのスタンスも見当たらない。ショルダーで中澤さんに上がってもらい、紐をもらってゴボウで登るが厳しくて、その上アッセンダーがフローティングを傷めて破断しそうになった…
結構危険な一幕だったが、なんとか登りきって大ビラヤス沢に入ることができた。 滝上は若干岩が傾斜していて、微妙にヌメリのあるトラバースでケツが引ける。落ちたら今のをやり直し、流石にそれはごめんだ。。
すぐに斜瀑の7m滝が現れる、すぐ上にも同じサイズの滝がある模様 7m滝に取り付くが凄まじくヌメるために右岸から高巻くことにした。 そんなに厳しくない高巻きで、7mヌルヌル滝とその上の滝を巻いて沢に復帰。すると水温が生ぬるくなった。振り返ると、ヌルヌル滝とその上の滝の間に側壁から大量の湧き水が注いでいる。
この水温ならもう泳ぎも怖くないため、今後は積極的に水に浸かっていくことにする。
次に出てきた15m滝は柱状節理の美しい姿で魅了してくる、左壁を取り付き、上部は巻き気味に登った。
沢は水路状のゴルジュとなり、泳ぎ、つっぱりを多様 水路内には小滝が複数出てくるが、どれも楽しく登れた。積極的に水と触れ合う楽しい区間だ。 水路状ゴルジュも終わり、沢は開けると越後の沢らしく明るく滝が続くようになる。
短いゴーロと小滝を登ったり小さく巻いたりしながら進むと、前方には光り輝く2段30mの大滝が出現。非常に美しい大滝で一眼カメラを持ってきていないのが悔やまれる。この大滝は下段を左壁から登り、上段を右壁へ横断して登った。岩はガチガチに硬くてホールドも多く、快適!
先には明らかにゴルジュの開幕するような側壁が見え隠れ… それを塞ぐようにどんと現れたCS10m滝は右手のバンドから登るが最後は連携で登った。中澤さんの身軽なムーヴを見習わなければ…
沢の屈曲の先にはいよいよ始まった、柱状節理の大ゴルジュ… そのあまりに非現実的な光景に言葉を失う。
というか、この景色を表現できる言葉なんてはなからないだろう。これまで見てきたゴルジュの中でも最も異質、異次元、驚愕 側壁30〜50mの高さで距離にして200mぐらいだろうか、凄まじい切れ込みを形成し側壁は美しい柱状節理でびっしりなのだ…
当然このゴルジュは高巻きになるだろうことからゴルジュ入り口に荷物をデポして、内部を見学しにいく。
小さな滝が何個かかかっており、足がつかない淵もある。 最も狭いところは幅2mくらいだろうか、見えげると、ハングした切れ込みに細長く青空が見える。これは本当にすごいところだった、学術的にも価値があるような造形 柱状節理は、火成岩からなるものがほとんどで、越後の山域ではなかなか見れるものではない。しかし先日いった滝沢や花降沢にも柱状節理が多くあり、荒沢岳周辺の沢ではかなりよく見る。
これは荒沢岳がかつて火山だったことを示していて、地質図で見ても荒沢岳周辺のみぽっかり火砕流堆積物となっていて荒沢岳カルデラと名付けられているらしい。ちなみに銀山湖対岸の白石沢スラブ周辺は奥只見カルデラというらしい。
ゴルジュの最奥には100m規模の大滝がかかっているようだが、その手間で完全に沢を塞ぐようにして15mCS滝がある。ゴルジュ見学はここまでで引き返した。
ゴルジュ見学を終えて、骨の折れそうな高巻きを開始する。
ゴルジュ手前の左岸ルンゼから樹林帯に入り、休み休み樹林の中をトラバースして巻いていく。ところどころにある露岩から、ゴルジュの上に聳え立つ忘れ去られた大岩壁「猿ヶ城」を望む。勇壮な柱状節理のハングした岩壁に登路なんてあるのだろうか?そしてこんな奥地まで開拓しにきていた当時の岳人の熱意には驚きを隠せない。
高巻きを続け1時間程度でゴルジュの先にある大滝の中段に降り立った。ここからの景色は圧巻すぎる。まだ時間は13時と早いため、しばらくこの大展望地で休憩する。大ナメ滝と猿ヶ城の景観は本当にすごかった
30分近く休んで、先へ進む。 大滝から続くナメをちょこっと登ると沢はいきなり平凡になる。
参考にした記録では、この辺で泊まっているパーティーが多かった気がしたが、あんまり泊まりやすいところもないため、先へ進むことにした。
小さなゴルジュの先はぱ〜んと開けた!滝が続いた超絶開放的な渓相! いやいや素晴らしすぎるぞ大ビラヤス! 先ほどの柱状節理ゴルジュから一転してこの爽やかで開放的な滝&ナメ区間… これは100点満点です!
長く続くナメもいよいよ終わるとCo1330付近で右岸から1:1で出合う二俣になる。ここから沢の規模はぐんと小さくなり、少しボサい中をたまにナメがあったりする感じ。そろそろテン場ないかな〜と進んでいるとい、15:00前にCo1400付近の右岸台地の物件を発見!ここは整地すればかなり良さそう。
かなり頑張って整地して極上のテン場が完成!薪も無限にあって最高だったが、西陽が暑すぎて全裸になって休んでいるが耐えられず、タープを張る! タープの下で全裸でうたた寝…
飯を大量に食って寝たが、夜は台風の余波か?風がやたら強く何度か目を覚ます。
8/15
後は沢を詰めるだけなので、のんびり準備して6時出発。
進路は、Co1550での二俣を水流のない枝沢をまっすぐ進んだ。最後は少し藪を漕いで灰吹岳とのコルに7:30到着
テン場から1時間半で稜線に着いたので、昨日の行動時間から考えても足が早いパーティであれば日帰りでも抜けられそうだ。
稜線は台風の影響で吹いている強風が心地よい。30分程度で荒沢岳に到着! 素晴らしい見晴らしで、ここでも中澤さんのい山座DTの解説付き 中澤さんは周囲に見えている山のほぼ全てを登頂済みのようだ笑
下山は当たり前だけど前嵓尾根、噂の鎖場はかなりヤバイ感じ… 前嵓の鎖場から下は森の中を緩やかに下る登山道で快調に下山 11:30に登山口についてそのまま白銀の湯に直行! 昼飯は美味しいトンキーでカツカレー!超美味しい〜
・所感・
大ビラヤス沢は予想をはるかに上回る、素晴らしい沢でした。北ノ又本流パートでは泳ぎ、大ビラヤスでは快適な滝とゴルジュ、異形の柱状節理、ナメ…と本当に目まぐるしく変わる渓相に盛りだくさんの内容! 詰めも下山も苦心しない。最高です 少数で早いパーティであれば十分日帰り可能だと目されます。これは今年ベスト3に入る会心の一本でした! 中澤さん5日間ありがとう!これにて夏休み終了〜