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2023-09-24

北ノ又川・滝ハナ沢

2023.9.24

越後駒ヶ岳に詰め上がる名渓として名高い北ノ又川支流・滝ハナ沢。沢屋たちに名が通った沢ではあるが、昨今のオツルミズ沢のように消費コンテンツ化はされておらず、近年の記録も疎らな沢である。

この沢に人の出入りが少ない理由は雪渓にあると思う。

雪渓の特に多い越後駒の沢の中でも別格で雪渓が残る沢の一つで、毎年9月末〜10月になっても遡行困難にするほどの雪渓が残り、厳しい地形ゆえに高巻きから戻れず稜線まで巻き上げられるというケースが多いようだ。

そんな不安定な雪渓の状態と、なんとなく厳しい沢というイメージからあまり馴染まないままなのかなと思う。

自分も滝ハナは経験値的にまだまだ先かなと思っていたけど、ケーシと中澤さんは滝ハナをずーっと昔から狙っていたようで、この週末、確実に快晴の一日を使って日帰りで行くことになった!

今年3本目の北ノ又川流域 1年でこんな通うことになるとは笑 

夜明け前の5時に白銀の湯に集合するためシルバーラインを走るが銀山平ではすごい車の量… 交通誘導員までいて何事かと思ったら枝折峠で滝雲が見られるようで、滝雲+エチコマの登山者で溢れかえるため交通規制してシャトルバスを運行しているという。

白銀の湯に着くとこれまた誘導員がいてすごい数の登山者と車が… なんだこれ…笑

3人と合流して準備するが、気温は10度…すごい冷え込みだった 

まだ薄暗い5時過ぎに出発、坪倉沢のちょい下降と北ノ又のゴーロ歩きは慣れっこ。 箱淵は当然のように右岸から高巻き

急ぎ足で滝ハナまで向かい、出発から1時間半ぐらいで出合に到着した。

滝ハナ序盤のナメ
2段8mの連瀑
広河原までのゴルジュを進む

滝ハナ沢は出合いこそ非常に穏やかな森の沢という感じ ちょっと進むとすごくいい感じのナメが出てきて楽しめる。 ミニゴルジュにかかる2段8m滝は右岸の草付きから高巻いた。

その後もゴルジュっぽい感じの地形は続き、腰ぐらいまでは普通に濡れる。

広河原を過ぎた
例年雪渓で覆われる屈曲
いよいよ滝ハナの核心部入り口

小ゴルジュを抜けた先の広河原は日が射して暖かい。左岸の台地上にはとても綺麗に整地された幕営跡 ついさっきまで人がいた模様 幕営跡からもわかる手練れ感

広河原の先は例年大きな雪渓が覆っているようだが、今年はスノーブロックが転がっているだけでなんの問題もなく通過できた。

そして滝ハナはこのCo1070付近の屈曲部からいよいよ壮大なスラブ渓谷へと変貌を遂げていく。

まずはいつもは雪渓の下に隠れているであろうゴルジュ 今年はその全貌が現れており、両岸とも真っ白い堅固な岩盤に囲まれた美しい造形だ。

5m滝から始まる絶景
ナメの先には40m大滝
美しすぎる40m滝と前衛ナメ

ゴルジュが開けると、本当に広大なスラブ空間となり、それはまるで自分が想い描く越後の心象風景。 先にある40m大ナメ滝から始まり、いくつもの大釜とナメが織りなす絶景。  これは水無川の北沢・真沢出合に匹敵する壮大な空間だった。

40m大滝 名瀑
快適な登り
極美のゴルジュ

40m大滝は美しい弧を描く神秘的な名瀑 間違いなく、今年一番の美しい滝だ。 右壁から快適に登ると滝上にもナメが何段か続く ここは滝ハナで最も美しい区間であり、数多ある越後の沢でも別格だと思う。

極美のナメ!
これぞ越後!!
左岸支流の大滝

続く大ナメ区間は波うった蛇行を繰り返す不思議な地形を作っており、その美しさに感動を覚える。素晴らしすぎるぞ滝ハナ沢! ここまでは超癒し系の沢登り。 Co1180では左岸から大支流が50m以上の滝となって注いでいる。

そしてこの出合いの先はいよいよ厳しそうなゴルジュとなっていて、上空は雪渓に囲まれている。いよいよ滝ハナの真髄である雪渓処理のパートが始まった。

暗いゴルジュに6m滝
この雪渓から左岸巻き開始
30+20m大滝

左岸のルンゼ状から高巻きを開始し、草付きをトラバースしていく 途中草付きの下に見えた岩棚のテラスに行くと眼下には30m+20m滝が雪渓の切れ間に落ち込んでいる。 なかなかの壮絶な空間だ 奥に見える20m大滝落ち口へ続くリッジがクライムダウンできそうな傾斜に見える。

おっかないクライムダウン
両岸側壁は50m以上
赤茶けた脆いゴルジュ

草付きの高巻きを継続するが、先頭の中澤さんが早過ぎて追いつけない笑 沢に降りれそうと踏んでいたリッジは見立て通りにクライムダウン可能だったが、なかなかにおっかない。 

沢に降り立つと赤茶色の不気味なゴルジュとなっていて、側壁も50m以上の高さがありかなりの威圧感 幸い、ゴルジュの中はナメはいくつかある程度で困難な滝はなかった。

この先には、おそらく万年雪と思われる巨大な雪渓がある。雪渓のどんつきには滝ハナ沢の左俣出合いの大滝が不気味な形相で構えている…進路となる右俣の出合い大滝は死角となって見えていないが、そこまではスラブトラバースで巻く必要があるようだ。

絶対に落ちれないスラブ巻き
正面の切れ込みが左俣大滝
出合いの右俣大滝の上部

ここの左岸スラブ高巻きが滝ハナ沢の肝だと思われ、ホールドがつながっているスラブを慎重に進んでいく。 

長いスラブトラバースゆえにロープを出してもそれには意味がないので、ここはパーティ全員が高度感のあるⅢ級のスラブトラバースをこなせなければ詰みとなるところ。

かなりの高度感と要所で強度が高いトラバースだった。 ここでも中澤さんは早過ぎて気がついたらはるか先の右俣出合い付近まで行ってしまっていた笑 

どんつきのスポンジボブのような巨大氷塊の先には70mの左俣大滝の全貌が見えたが…左俣って人類未踏なのではないだろうか?笑 

右俣大滝は2段60m程度となっていて、今いる位置はちょうど中腹のテラスのようだ。

残りを草付きから簡単に巻いて、ようやく沢に降り立った。

右俣に入ると間髪入れずに10mの滝があるが、直登は難しそうなため、また左岸の草付きから巻く。この巻きの途中、右俣のメインとなる6段100m大滝が一望でき、度肝 こんな沢初めて…!

10m滝の左岸巻きは小さく巻けたが、沢復帰のクライムダウンがニラ頼みでやや怖い。 

6段100m大滝手前の空間は極上で、ナメが続き、一切の流木や土砂の堆積がない。完璧な一枚岩で構成されていて至極の景色である。

素晴らしい見晴らし
最後の連瀑帯
黒滝50m 左から爽快に登る

6段100m大滝は、左岸から取り付きフリーで乾いたスラブを登っていく。 途中からは登りにくくなるため、左岸の草付きを継続して巻いていく。 

滝上はちょっとしたミニゴルジュになっていて、CS3mが泳ぎな必要なうえに難しい。突破は諦め、またも左岸ニラを高巻くがこの巻きは上部連瀑帯まで続き、なかなかに長い巻きとなる。途中枝沢があって水分確保は問題なかった。

草付きのニラ高巻きのため、常に沢の状況が眼下に見えて連瀑帯の再奥に控える黒滝を目指して下っていく。

黒滝は右岸のバンドから快適極まりなく登れた。これまで高巻きが多かったので夢中で登りきった。

快適な黒滝の登攀
黒滝上から望む荒沢岳
いよいよ滝ハナも佳境

黒滝を登って振り返ると、正面には荒沢岳がよく望めた。 荒沢岳…本当に美しい山である。今年はよく越後にきているため見慣れてきた景色ではあるが、この見慣れるというのが実に良い 自分にとって今年は越後の年と言い切れる。

黒滝の上も大きくはない滝が終わらず続く、中には意外と曲者の小滝もある。

そんな曲者小滝の一つで中澤さんがお助け紐を出してくれた時に、同時に何かを釜に落としてしまった 落としたものが何かわからなかったが、この時はまだ分からなくてよかったのかもしれない。

Co1620の奥の二俣を右俣にはいれば、いよいよ源頭の雰囲気である。

30m滝を登る
詰めの風景
稜線着

上部のナメと一体化した30m滝を登ると、ささやか小ナメのちゴーロとなった。 水を汲んで最後は急な草付きルンゼをヒーヒー言いながら登り切るとパッと登山道に出た。

先行していた中澤さんが稜線にいる人と会話していると思ったら、知り合いのようでオツルミズを単独で登ってきたらしい。

その方と話すと共通の知り合いが多く、来週はなんと渓たそ(泡沫Vtuber谷川渓)と沢に行く予定だとか笑

なんの繋がり!?と思ったが、毎年開催されている沢屋交流会で知り合ったようだ。なるほど~

…沢屋交流会は関東以西での実施が多く東北勢にはまず参加不可能である…残念!

爽やかな秋風が吹き、涼しい稜線を歩いて、3週間ぶりのエチコマ山頂 今日は本当にめっちゃ涼しくて下山も快適。

17:00 頃、怒涛の12時間行動で滝ハナ沢日帰りを無事終えることができた。

車に戻って、中澤さんの釜での落し物が判明…なんと車のキー だが、鍵をかけていなかったのが幸いし着替え片付けはできた模様 最後に思わぬことが起きたが、無事に滝ハナを終えて本当よかった…!

1人、白銀の湯に浸かって下道で7時間かけて仙台へ帰った。

ヤマレコの記録に中澤さんの遡行図あります。 最近はヤマレコにも速報記録あげること多いので、興味あれば是非のぞいてください。

・所感・

スラブの発達した美しい渓相は越後でも屈指の景観だと思います。 今年は雪渓が少なく、40m大滝までは癒しの沢でしたが、その先の万年雪渓の巻きから右俣の遡行はルーファイがある程度卓越していないと厳しいと思います。

絶対にミスれないスラブトラバースや大滝の巻き・登りの全てを全員がフリーでこなして、一度もロープを出さなかったからこそ4人Pでも日帰りが可能でした。改めて中澤さんとサワグルイの2人に感謝!

これまで行った日帰り沢では、間違いなく最高峰の内容でした。この景観は日本でもトップクラスの渓谷だと思います! さて、越後駒の沢ではあとは芝沢左岐、水無川北沢、オツルミズあたりに行きたいぞ〜

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