竜川 安栖沢ゴルジュ〜初夏のゴルジュ感謝祭〜
2024.6.30
能登の災害対応から仙台へ一時的に帰るタイミングに合わせて沢登りに皆さんを誘ってみた。
行き先は安栖沢(あずまい)だ。この安栖沢は、日本の渓谷98/99に最強の沢ヤと呼ばれる大西良治さんが大学生の頃に寄稿した沢だ。大西良治さんは今も昔も徹底したゴルジュ志向であり、それ故に安栖沢も東北に珍しいゴルジュ沢だという。
安栖沢は近年まで詳細な記録はWEBに少なかったが、岩手の沢ヤであるキツツキさんが2023.8に遡行し、かなり詳細な記録を上げてくれた。
記録を読むにやはり安栖沢は一筋縄には行かないゴルジュ沢のよう。しかしその渓相の美しさや秋田駒というあまり沢登りで馴染みのない山域にあるということで惹かれていた。
ゴルジュとなれば、宮城最強のゴルジュオヂサンの団栗林権蔵先生と沢への情熱が激しく燃えたぎり、身につける全てが赤く染まるモーリーさん(タバコは赤マルでもラキストでもない)の両名を呼ばずして誰を呼ぼう。
そしてポムチムの最も古い山友のクズミンも当然駆けつけてくれた!
さて俺たちの夏は始まるのか、はたまたゴルジュに呑まれてしまうのか? 明日はどっちだ!
早朝、ポムチムの家から車で3分のところに住むモーリーさんを迎えにいく。モーリーさんは前日飲み過ぎたようだ。ほんの数分、仙台宮城ICに入る頃には寝心地の悪いプロボックスの後部座席で爆睡していた。
久々の東北道北上だ、やはり東北は良い。
盛岡で降りて、道の駅あねっこで権蔵先生と合流。 プロボックスに全員乗り込み国道47号から林道へ入る。
林道の状態はまずまずで、崩壊に塞がれるも目星をつけてた場所の近くまでは入れた。斜面を下り藪を少し漕いで安栖沢へin


最初はしばらくゴーロ歩きが続く。癒しの清流だが、今日は真夏日 こんな具合だと暑くて干からびちまう。
co520付近で右岸から20mほどの滝で枝沢が出会う。ここを皮切りに両岸がグッと狭まり皆様お待ちかねのゴルジュスタートとなる。
ゴルジュF1は3m程度の滝だが、大きな釜を持っておりいきなし泳ぎから。切込隊長真っ赤っかモーリー閣下が見るや否や突撃だ。火蓋は切って落とされた。
F1は左岸よりから回り込んで這い上がる。見た目よりもあっさりだった。
F1の上は深いゴルジュの中、釜とナメが続く感じでvery good 岩は暗い色で安山岩っぽい。これはかなりいいゴルジュじゃないか!
多少のヌメりはあるが、乾いてるところはラバーが効くので問題ない。暗い廊下を進むとまるで堰堤のように進路を塞ぐF2が出現。
F2は5m程度の滝だが、ゴルジュの中全く隙がない感じで塞いでいる。ぱっと見で右壁のクラックが弱点のように見えたがとりあえず全員で一度トライするが越えられない。
権蔵先生は、水流右ののっぺりした壁を攻めるようだ。他の3人はキツツキさんが突破した左壁のトラバースに挑戦。モーリーさんはカムを決めてポムチムへバトンタッチ、なるほど、被ったトラバースはかなり怖い。
カムをもう一つ取って、大股の一歩が恐怖!なんとかキツツキさんが打ち込んだであろうハーケンにピンを取る。ハーケンを支点に振り子の要領で滝上に飛びついた。 あ〜怖かった。。
ビレイの準備をしていると、右壁を攻めてた権蔵先生が突破!このオヂサンすご過ぎる
そんなこんなで全員無事に難関のF2を突破できた。
F2からすぐに6mくらいのF3 この滝も大きな釜を持っていてかなり美しい姿だ。
しかしF2同様、周囲は完全に壁に囲まれている。これじゃ高巻きも相当厳しいだろう。
なんとなく滝の右側が気になったポムチムは泳いで接近。やはりチムニー状の弱点があった。
カムを決めることができたが、ホールドに手が届かない。権蔵先生だろこれは
やはり異常なリーチを持つ権蔵先生は登って行った、が、滝上のトラバースがかなり難しいようで珍しく慎重な様子。落ち着いてハーケンを決めた権蔵先生はトラバースし横断に成功!えぎゅい
後続も結構難儀しながら突破。最後のポムチムはハーケンを回収しなければならない。
トラバースして沢を横断した先でビレイされているので、滑ったら振られて滝に曝される。恐々としながらもなんとか無事に回収して突破できた。ふぅ。。。
F3からしばらくは難所はなくゴルジュがとっても楽しい区間。
どこか西のコマイに似た雰囲気のゴルジュが続き、時に泳いだり時にへつったり 大変素晴らしい。
co600付近はセクションの区切りで一瞬だけ河原状になる。左岸から大きめの枝沢が滝となって出合っている。
わずかな河原区間を過ぎると後半セクション開始。大きな釜の先は小滝の連瀑となっている。ここが「稲妻状の5連瀑」というやつか。稲妻はよくわからなかったけど、非常にかっこいいゴルジュ。ここの通過は容易だ。
ちょっと泳いだりで楽しく先へ進む。奥の方には大きな滝のようなものがチラチラ…あれがラスボスの10m大滝か!?
ゴルジュ最奥に潜む大滝はいかにもダンジョンボスの佇まい。ぬらっとした岩盤に囲まれ瀑水を勢いよく吹き出している。
一見して左壁のバンドが続いているように見えてモーリーさんとポムチムは偵察。
ん〜無理かな?0%じゃないが瀑水に突っ込む覚悟じゃなきゃいけない。左壁の直登は難しいように思える 瀑水に入る場合は30%くらいの確率で吹っ飛ばされてしまいそう。高巻きしましょ
しかしこの高巻きがまぁ悪い。ロープを出していくが安定した樹林に出るまで、相当悪いドロドロの巻きとなった。 樹林からは10m滝が直下に望めた。やはり右岸の壁はツルツルでホールドも何もないように見える。
滝を登るには水流に突っ込むほかなさそうに思えたが…? 後日再び遡行したキツツキさんが突破したようです!これで安栖沢ゴルジュは全ての滝が登れることが明らかになりました。
短い懸垂下降で滝上に降り立ち、1.2の小滝を超えると突然ゴルジュは嘘のように開け、森に包み込まれる。
右岸の枝沢を林道まで登っている途中、雨が降り出し林道を歩く頃には豪雨になってしまった。
進むのが少しでも遅くて、今あのゴルジュの中にいたらと思うとゾッとする。
安栖沢は非常に楽しくて、美しくて北東北有数のゴルジュ沢だった。2kmとも言われているゴルジュはせいぜい500m程度と思ったより短いが、その中にギュッと沢山の要素があって楽しめる名渓だ。
ゴルジュのみを遡行するスタイルとなってしまうが、それでも充実した最高の1日だった。