市房山 境谷(立岩谷遡行、市房谷下降、二ツ岩谷遡行)
2025.4.30-5.1
市房山当面の沢(一ツ瀬川右岸)にあって九州を代表する沢といえば、「山之口谷」と「境谷」
境谷は日本百名谷に数えられ、ある書籍には「沢登りの全てが凝縮されている」と賛辞の言葉が綴られるほどの名渓だそう。
境谷は上部で右岸から市房谷、立岩谷、二ツ岩谷という3つの沢に分かれる。どの沢も違った一面を持つようで興味深い。 どうせなら全部行ってまえ!と言うことで今回の遡下降ルートを考案した。
今年のGW 、九州はめちゃくちゃ天気がよく、幸か不幸かこんな欲張りな計画も成立してしまったのだった。
まずは立岩谷の遡行を目指し、一ツ瀬川を横断する。これは市房の沢へ入る通過儀礼だ。
4/30 入渓(7:00)-神仏の滝(9:00)-すだれの滝(10:20)-立岩谷出合(12:00)-稜線(14:20)-市房山(16:00)-C1(17:00)
相変わらず一ツ瀬川は渇水しており、渡渉に足首までしか濡らさない。 これが豊水期になると本気の泳ぎ渡渉となるってんだから驚きだ。
境谷は出合から8mの滝で始まる。入渓直後は暗く「陰鬱」かつ「鬱蒼」としたホルンフェルスの渓相。これについては市房の沢どこも共通だ。
暗い雰囲気の中、いくつかの滝が出てくるが高巻き用の残置ロープもあったりと、有名沢であることの証左が伺える。
しばらく遡行すると、20m CS滝と合う。
岩盤を断ち割るような鋭い流れの斜瀑である。左岸の弱点から巻いていくが、残置のトラロープは千切れ、ルンゼのロープも落石と流木で押し流されている。おまけにカモシカの腐乱死体があったりとすこぶる感じが悪い。
過去に事故もあった箇所とのことで、ちょっと大きめに巻いて滝上へ抜けた。間髪入れず15mの堰堤状直瀑 この滝は左岸巻きとされているようだが、明らかに右岸巻きのが良い。
右岸から高巻き、少し歩けば奥にやたらとデカイ滝が見えてきた。
大滝の正体は60mあると言う「神仏の滝」 多分実際の落差は40mくらいだと思うが、なるほど、思わず合掌してしまうその佇まい。 名の如く、幅広で力強く、だがその中に繊細さ、優美さを兼ねた名瀑だ。
神仏の滝は右岸から大高巻きになるが、ここはルーファイと、巻き力が必要になる場面だ。
神仏の滝を巻き降りれば、沢は少し明るい印象に。ようやく登れる滝も出てきて、沢登りらしくなってきた。
しかし全て登れるわけではなく、高巻きと半々という感じ。 現状、遡行している楽しさに関しては「微妙」と言わざるを得ない。
やや荒れた先には「すだれの滝」が出迎えてくれた。 ついでに巨大イノシシ親子も出迎えてくれた。
イノシシと鉢合わせた時、あまりの巨大さにいるはずのないクマと思って心臓飛び出すほどびっくりした。
「すだれの滝」は整った美瀑だが、それほど印象には残らない。 良くも悪くもとても整った姿だ。
すだれの滝は、左岸から高巻くことにする。
小さめに巻いて、沢へ降りれそうだがすぐ上にも登れそうにない滝が見える。 結局一つ二つ滝を巻いてから沢に復帰した。
花崗岩エリアに入ったのだろう、岩は淡く赤みを帯びている。しかしなんというか、荒れているというか、荒涼しているというか。 まぁあんまり綺麗ではない。
滝は次から次へと出てくるが、対して印象にも残らず、高巻きも多い。 なんかイメージと違うな。
これにはKCも同じ印象なようで、崩壊沢だと言っている。
まさか「沢登りの全てが凝縮された沢」が荒れ果てた崩壊沢だとは思わなんだ。
949では右岸から市房谷が出合う。 明日はまたここに戻ってくる予定だ。 市房谷も荒れ果てているように見えるが…
そして進路を見やると絶句! 見えげる高さの巨大岩屑が積み重なっている。最悪や!
この景色には正直激萎えだ。だって、明日またこの巨岩堆積を通過しなければならないのだから。
正直最悪の気分でいた。 何が日本百名谷だよアホくさ!未だかつてないクソ沢じゃないか!などと散々ぼやきながらco1030の立岩谷出合に到着した。
出合で一服し一瞥、今日進む立岩谷、明日進む二ツ岩谷、どっちもソソラレない雰囲気がムンムン漂っている。
でもしゃあない、ここまで来たらいくしかあるまい。 右岸側の立岩谷出合にかかるしょぼくれたナメ滝を一段登った。
・・・・驚いた! なんだこれは!なんなんだこれは!!
これまでの巨岩ゴロゴロ沢から急転直下。 岩屑の堆積一つない、なめらか、ツルツル美人ナメスラブが見渡す限り続いている!
市房の沢はギャップ萌えがあるとはいえ、この渓相変化は流石にメンヘラすぎだろw
ナメ床愛好家のポムチムだが、この規模は国内でも有数だろう。距離にして400m、比高150mの規模だ。
豪雪地でもないのに、滑らかに削られた花崗岩のナメスラブ ここ境谷でしか見ることができない景観だろう。
さっきまでは期待とあまりにもかけ離れた境谷に罵詈雑言を吐きつけていた2人だったが、このナメスラブには流石に大興奮した。歩けど歩けど続くスラブに夢中すぎて、途中でカメラを置き忘れてしまった。
co1140付近でナメは終わり、三度ガレ沢となった。 このまま詰めると最後は稜線直下は崖のように急になっているので枝沢を進む。 最後はボサボサになって藪を一漕ぎ。市房主稜線に出るが、核心部はこれからだった…
市房主稜線は踏み跡が薄く、マダニが大量に生息する尾根を縦走する。小刻みなアップダウンが続き、非常にハード!!!!ここ一年で最大の満身創痍!!!!
最後は半ば発狂しながら市房山頂に辿り着いた。 山頂に辿り着いても安堵できない、このまま下山したいが、作戦を遂行するために登山道を少し下り、下草の薄い東尾根へ逸れる。
明るい疎林で標高を落として、市房谷へ下降した。 市房谷の源流部は河原がなく、とてもゆっくり泊まれそうなポイントはない。
仕方がないので、coのゴーロの中、適当にオープンビバークとした・・ 死ぬほど疲れた1日だった・・
5/1 C1(6:10)-949出合(7:10)-二ツ岩谷出合(7:20)-稜線(9:40)-下山(12:00)
ほとんど平らな部分がないゴーロで寝たので熟睡できず、体はバキバキ… どんよりと重い空に全くやる気が出ないが、もう引き返すこともできないので渋々市房沢を下降する。
市房沢は一応、境谷の本流のようだが、全くもって荒れ果て、ただひたすら崩壊と巨岩だけの糞沢だった。
949の出合まで1時間ぐらいで下降できた。 あの巨岩を再び乗り越え。昨日ぶりの二ツ岩谷出合。
二ツ岩谷を少し進むと滝が出てきて、すぐにハイライトの100m大ナメ滝を迎える。
正直、昨日の立岩谷のナメスラブを見てしまうと全くチンケと言わざるを得ない。 しょぼしょぼと流れる100mナメはナメというには傾斜が強く、登高意欲はまるで湧かず、右岸の樹林帯から巻いていく。
100mナメの上もこれといった見どころもなく、だらだら進むと「桃源郷」なる源頭部まできた。
確かに綺麗なところだが、ガスガスな上に寒い。 何が桃源郷やねんとは言わなかったが、無言で稜線へ抜けた。三度、市房の癖強下山をGPS頼りでこなして下山。
疲れ果ててた我々はカリコボーズの湯に直行した。
境谷は想像していた沢とはかなり違った印象で、荒れた大味な沢という評価。 しかし立岩谷のナメスラブに関しては完全に驚愕の規模で、九州の沢景観のうち「陽」の意味では鹿納谷や祝子川と並ぶ絶景で間違いない。
長く、高巻きばかりで渓相は荒れ気味・・・そんな苦行系の沢登りに耐えられる者は、立岩谷の超絶ナメスラブと謁見することができる。 個人的には近傍のそごう谷、ニタノオ谷の方がずっとお勧めだ。
KC、お疲れ様でした!





































