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2023-06-25

丁岳山地 小又川左俣 雁唐滝

2023.6.25

丁岳山地は鳥海山の東に広がる標高1000m前後の山群で、主峰の丁岳は東北100名山に選ばれている。

丁岳山塊は開発からは程遠く、北東北の山塊では特に原始的な香りを残す山地だという。

この山塊は沢登りの記録も極端に少なく、近年では地元釣り師ぐらいしか入っていないだろう。そんな丁岳山地の沢に謎に満ちた滝があると情報提供を下さったのが、昨年八幡平・芦名沢の滝に同行した鷹さんだった。その滝は「雁唐滝(がんがら)」と呼ばれる滝で航空写真からもその存在は確認できる。 

最上観光協会のHPに滝の存在を示す記述があったが、写真等はなく、「落差150mの階段状のゴルジュの奥、スラブ帯に三段70mの幻の豪瀑が姿を現す。上部の滝は、二つの沢水を集めた不思議な形をしている。」とだけ記されている。

この情報だけでも滝屋の端くれとしては気になるのは当然で、沢登りとしても情報が皆無なこの沢の遡行欲を掻き立てられてしまう。

そして情報を得て以来タイミングを見計らっていたが、今回ようやく情報主の鷹さんと鷹さんの相方ノリさんと共に雁唐滝調査を立ち上げたのだった。

小又川右岸に付けらた林道はダートだが、状態は悪くない。わずかな期間稼働したという日正鉱山跡を横目に林道終点まで行かずに少し手前のスペースに駐車。車高の低い車でなければ、終点まで行けるレベルの林道だ。

だがしかし、車を降りた途端、プシューッと明らかに空気の抜ける音が…なんと後輪にごつい角礫がぶっ刺さってパンクしているではないか…!! 幸先悪いが、下山後に補修することにしてジャッキアップだけ済まして調査開始

すぐに大きなスペースのある林道終点だが、なんと車3台あり こんな場所でまさかのバッティング。。

地理院地図通り、左岸に付けられた道は現存し、それもめっちゃ明瞭 重機が入ったようであれ意外と人臭いなという印象。

明瞭すぎる左岸の破線
ブンド沢出合い ゴーロが長くてシンドイ

地理院地図通りに女加無山方面へ左岸の道が折れると、沢中を歩くがヌメるゴーロに気を使う。ゴーロは長く、無心の極み

ブンド沢を分けるところに車3台の主発見 やはり釣り師で3人 若者二人と師匠的なおじさまが一人 聞くと昨日から沢に入っていたようで横には焚き火跡があった。なるほど砂浜になっていて絶好の幕営地だ。。彼らはもう帰るというので気兼ねなく進ませてもらう。雁唐滝の存在は知らないようで、手前にある小さな滝に当たり引き返してきたという。

大高巻きとなる2段15m滝
ナメが発達しだした

左俣に入ってすぐに、両岸が険しくなると、屈曲部の先に8m程度の直瀑が現れた。これが釣り師の引き返した滝だろう。地形をよくみると、90°左へクランクした先に2段目があるようである。 両岸は高く、バーチカル 右手の草付き壁にわずかな直登の可能性を感じるものの、無理できないし、上段が登れない場合は進退窮まるだろう。 ここは明らかに手前の左岸リッジからの大高巻き 高巻きは1時間かからずに綺麗に巻くことができてルンゼから滝落ち口のすぐ横に降りてこれた。ここには支障にならないスノーブリッジがあった。

ここからしばらくは特になにもなく、ゴーロを進みCo500くらいから渓相は一変 屈曲した先、スノーブロックの残骸がある4m滝を登ると、ナメ滝が発達したいい雰囲気に! これが例の階段状ゴルジュの始まりだろう。

ナメの先にある3m滝
快適な10m滝

ナメを快適に登ると、先には大きな釜のある10m斜瀑 左壁から快適に登る 2人の滝屋さんも問題なくスイスイと登っていく。

開けたナメ床
左岸の大スラブ

10m滝の先は開けたナメ床になるが、倒木や土砂がやや目立つ。 そして圧巻なのは左岸の大スラブだ。頂部まで高差200m近くはあるんじゃないか… あの平凡なゴーロ沢からこの急変ぶりは感動してしまう。

6m滝
スラブ状のナメが続く

なおも滝は続きいずれも快適に登る この辺りは正統派の沢登りで非常に面白い! 景観も明るく、こんなに楽しい沢だとは思ってもみなかったので気分もどんどん盛り上がっていく。

いよいよ現れた雁唐滝
右岸草付きよりパシャリ

そしていよいよ、待ってましたの雁唐滝 おお、なんとも類を見ない形状! 情報通り、2つの沢の出合が直接滝となっていて、その下も2段の滝に。これはY字状とでも言えばいいのだろうか、なかなか稀有な滝姿だった。

最下段?の2mは問題ないとして、中段14mが右壁が登れそうだが、雪渓残骸の藁が大量に覆っているため、右岸の草付きを使って巻いた ここではチェンスパを活用 最後は念の為、捨て縄を用いた懸垂下降で降り立った。

雁唐滝近景①
雁唐滝近景②

雁唐滝は左の支流の方が25m程度、右の主瀑が見えない部分含めて40m程度だろうか。前段合わせてもおそらく情報にあった70mはあるかないか…という規模感だが、それにしてもこれほどに素晴らしい滝が、沢が、今の今までろくに情報もないまま残されていることに驚いた! そして右手の主瀑は、右壁から明らかに快適に直登できる。 滝屋的には目的の滝まで来たら基本は遡行してきた沢をピストンで加工するのがセオリーだが、正直言って下降する方が面倒だし、明らかに直登できるこの滝を前に帰るのは流石にいただけない。それにこの上流にも滝があることを航空写真で確認済みのため、ここまで来たら全部見ましょう!と相談して滝の上流へ進むことに決定。

3ピッチ目を上から
上の大滝35m程度

鷹さんにその場でビレイ方法を教えて、ぶっつけ本番でリードフォローは厳しいため、フィックスすることにして後続はゴボウで登ってもらうことに。滝の落ち口はスラブ状になっており、厳しい。乾いた壁を落ち口より10m程度上まで登り10mの懸垂で沢に復帰した。 30mロープで2.5ピッチだったが、慣れていればロープ出さなくてもいいぐらいには快適だった。

鷹さん、ノリさんも問題なく登った。 先にはこれまた大きな3段の滝がすでに見えている… 3段35mと言ったところか?

すだれ状でとても美しい滝だ…! この滝も傾斜は緩くロープなしでも明らかに登れる。

上の大滝を正面より
最上段は右手から

美しい滝との対面にうっとりし、しばらく撮影タイム。 一休みして登り始めるとヌメりはあるが快適に流水左を直上、上段は右手に移って直登 いやいや登れる滝ばかりで最高じゃないかこれは〜!

これで終わりかと思ったら、4段目?と言っていいのか、そのまま美ナメ滝8mが続く これは今日イチの美しい滝だった。

8mナメ滝
少しのナメを歩き、左岸を乗っ越す

8m美ナメを越えると一気に平坦な沢へと戻る 典型的な東北の沢の渓相らしいナメが現れて、左岸の低い鞍部から小又川右俣の支流方向へ乗っこす。薄い藪だが、イラクサが多く、先頭を預かっているポムチムの足に痺れが止まらない。

痛い痛い!!と騒いでいれば先頭変わってくれるかなと思ったが、そうでもなさそうなのでそのまま進むと右俣の支流にすぐにでた。伏流していて、ブルーシートの残骸がある。こんなとこまで、入る人は入るんだな〜 そのまま右俣の本流に入り下降するも特になにもなく、唯一あった崩壊した雪渓を気をつけて処理しただけ。右俣下降を選んで大正解だった。

あとは往路と同じく、長いゴーロを戻って15:00ごろ無事帰還! パンクしたタイヤは、鷹さんノリさんの手助けあって補修剤でなんとか走行可能に! その後は真室川のスタンドで補修したけど、今度タイヤ交換してくださいと言われた・・

・所感・

小又川左俣はゴーロが長すぎて、沢登りとして面白い区間は約1km程度と大変短いが、快適な大滝が連続して明るく、この区間は素晴らしい沢だった! こんな沢が丁に眠っているとは。。やはり沢登りは奥深い 

そして情報のない雁唐滝の謎をこうして解き明かすことができて本当に良かった〜 人々に姿を晒すことのない秘瀑が丁や周辺の山域には沢山眠っているのでしょう。 

今後また丁の沢に行くかは不明だが(ゴーロとヌメりに若干懲り懲り…)、初めての山域に足跡を残せてとても良かった。鷹さん、ノリさん、ありがとうございました! また沢を登って滝を探しに行きましょう〜

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