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2021-07-24

下田山塊 笠堀川・大川遡行-砥沢川下降②

7.24 小又沢-西ノ沢-Co830乗越-イワトメ沢-金蔵沢-砥沢川出合泊

今日は小又沢上部の西ノ沢を詰めて、砥沢川の支流である金蔵沢のさらに支流 イワトメ沢を下降し、砥沢川と金蔵沢の出合まで歩を進める算段だ。

最高標高にして830m程度なのだが、非常に険しい山容の下田の渓谷だ、情報が少なく何が出てくるかもわからない、気を抜かずに頑張ろう!

幕営地を6:00過ぎに出発し、しばらくは両岸が立っているものの、わりかし平和な様子。 側壁から落ちる枝沢の滝が朝陽に照らされて荘厳だ。

いくつか簡単な滝やゴルジュを超えていくと、河原になりとっても穏やかな流れに その先にはまた大きな釜がありイワナたちが元気よく泳ぎ回る。

東ノ沢(左手)と西ノ沢の出合 5mの滝となって出合う東ノ沢の方が幾分か水量は多いが、進路は直進する西ノ沢

ここから先、何も無いといいんだけども…

西ノ沢をしばらく進むと、両岸は高くなり、行く手には今にも崩れそうな雪渓と奥には何やらヤバそうな10m滝が…

雪渓は走って超えた直後に一部が崩壊し不快な破裂音のような轟音がこだまする…

そして、行先にある10mの滝… 直登は無理そうで、巻きもどうすんねんって感じの周囲 M氏と相談し、唯一の弱点となりうる左岸の草付き側壁を見る。

垂直に近い傾斜の12.3m程度の側壁、表土を被った岩がなんとなくホールドに見えるような、でも俺では絶対に無理なような… M氏はここを登るしか無いと言う。

その通り、もはやこの側壁以外に活路はなく、垂壁の上部は枝沢のスラブと草付きがなんとなく見えるあそこまで行けばなんとかなるか?

ロープ引いて空身で行ってみるよとM氏は心強く提言してくれるが

ぶっちゃけ これまじか!と言う感想しかない。

M氏はカムと超細い潅木の2点でランナーをとりなんとか垂壁の上まで登っていった。すごい!! 本当に逞しい、もう感激!感極まったがすぐに自分が重いザックを背負って、M氏のザックの荷揚げの段取りをしないといけない。

なんとかザックを背負った状態で登り切れたが、ド緊張で小便もうんこも漏らしそうなレベルだった。最近まで雪渓があったであろうそこは、ホールドとなる石に土カスや藁が被っていて最悪の状態 足元は垂直で高度感もMAX こんな沢登りはワシの範疇じゃない!!

心臓バックバクで登ると、M氏はハーケン2枚でビレイを取っていた 案外余裕だったわ〜と笑顔を見せてきたが、こやつすんげ〜と密かに尊敬した。

垂壁の上は枝沢のスラブが3段続いており、その先でようやく森が近づいて容易にトラバースできる箇所となった。

非常に濃い藪漕ぎを15分ほど進むと上流側に降りられそうな雰囲気に 進んでみると最後はスラブに阻まれて結局30mダブルで懸垂しようやく沢に復帰。

ふぅ〜〜

その後も滝が終始連続し、ロープを出したり、悪い高巻きをしたりと、とにかく大変!

とっても時間がかかり、ようやく緊張のほぐれる渓相になった時には14時を回っていた… 西ノ沢は想像よりも随分と険しく、大変な沢だった。

詰めの沢を1本間違えたり、尾根の乗越でルーファイミスがあり、終いには豪雨に見舞われるなどどんどん消耗していく。

ようやくイワトメ沢の下降位置であるコルに到着 既に15時過ぎ や〜ばっ!! となり一気に下りたいところだが、両サイドがスラブであり、木の生えた尾根を選んで下降するもナメ滝の下りに手間取ったりでもう全っっ然ペースが上がらない…

水流が増え出したや否やまたも豪雨、そして懸垂が必要な滝が何発かあったり もう勘弁してくれ、まじ頼むって!と言うような精神状態になる。

金蔵沢とイワトメ沢の出合が見えた時にはさぞ安堵した。しかしそこも懸垂が必要な滝があって、計3発くらいは捨て縄で懸垂しただろうか?

金蔵沢に降り立てばもう安心、特に何もなく数100m降れば漸く砥沢川との出合いに立つことができた。

一気に緊張が緩み、脱力 出合の右岸台地上にはやや薮っぽい幕営適地があり、倒れこむように仮眠

古い焚き火跡があるが、サワグルイさんのだろうか? 同じところに泊まっているはずだ。

M氏はまだ元気があるようで、日暮れまでアブにたかられつつも釣りをしていた。

この日は夕方の豪雨の影響で薪は全て湿っていて、集める元気もないので焚き火はせず タープの下で乾いた着替えをきて就寝

あまりに疲れ果てていたので超ぐっすり寝た。

 

7.25 砥沢川下降-笠堀ダム湖横断-笠堀ダム駐車場

さてさてなんとか無事に計画通り最終日になった。今日は砥沢川の下降が待っている。

下部には顕著なゴルジュがあり、何と言っても砥沢川からのデプローチが問題だ もはやダム湖を泳ぎ渡る以外の選択肢はない!!

最後まで持つか俺の体力、どんどん痛くなる左足! 頼む!持ちこたえてくれ〜

朝は穏やかで晴れている、鳥のさえずりと川のせせらぎに気の緩む気持ち 不安ながらもいっぱいの朝食を食べていざ下降開始〜

しばらくは河原歩きと小ゴルジュの下降となる、ところどころにワンポイント泳ぎの縁がある

砥沢川は、大川や光来出と比較しても水質が一際澄んでいて、水温もグッと低い それ故に泳ぎはかなり寒い

両サイドから湧き水がどんどん流入しているからだろう

砥沢川には名の通り、砥石があるようで良質なものだと高値で売れるそうだ… どれが砥石かわからないがブルーの岩盤が発達している。

右岸から3本の湧き水滝が注ぐところは一際水が冷たい キンキンに冷えた湧き水で喉を潤す。

下降の支障になるものはなく、好調なペースを維持する

それはもう見事なナメに有頂天気分 磨かれた白い岩盤に滔々と流れる淡いエメラルドグリーンの水

これでガンギマリ! もう何も望むまい〜

疲労も全て吹っ飛ぶような美麗な流れでした!

快調に下り続けると、いよいよ両岸が迫り来る狭さになり、下部ゴルジュの始まりか…?

難しい地形ではないため、地形の造形を楽しみながらワイワイ下る まだまだこんなものではないだろう…見せてくれ砥沢川!

先ほどの大きな河原が嘘のような狭いゴルジュ帯に変貌 砂利の堆積も少なく性癖にぶっ刺さる造形ゴルジュ

ここから笠堀ダムのバックウォーター(ロンレ沢出合)まで奇跡の絶景ゴルジュが続くのでした!

ゴルゴルのゴル スライダーは前科があるので横から入水して泳ぎ

その先にはこんな淵が待っていた! 気持ちェェェェェ! 夏最高ゥゥゥ!!

上シゲオ沢だかの出合 15mほどの滝として右岸から注ぐ 右岸の岩峰が圧巻の迫力だ

この辺りの渓相の美しさは筆舌に尽くしがたいものがある この地球の日本国に生を受けたことに感謝したい!

お父さんお母さん、ありがとう  僕は下田川内の渓谷を見れて大満足です 人生の喜びを今感じています

早出川のコウモリ淵ミニチュア版のようなゴルジュ 多少砂利の堆積が見られるが 依然その素晴らしきゴルジュワールドは健在だ!

2011年の水害前は泳げる水深があったのだろうか? 下田川内・会越の沢は2011.7の新潟・福島豪雨災害によって大きな被害を受けた。

10年前の災害だが、それ以降埋まってしまい今も変わらず砂利の堆積が見られる沢が多い。 特に中杉川なんかは大きく姿を変えてしまい、最近も崩壊が続いている。

ここ砥沢川もその片鱗が残るものの、埋まりきってはいなくて 見る者を魅了するゴルジュを残している。

右岸は200mはあろうかという大スラブとなった。 いよいよ最下部のゴルジュに突入だね。

おおお!!これは!これはすごいです! すごいです!!

スラブの直下はそのままゴルジュの側壁になり 見たこともないような造形美!

それに側壁のほとんどは柱状節理となっていて、もはや学術的にも貴重なのではと思わせるような地形😆

いかがでしょうか!? あんまり美しくて思い出しても興奮してしまう。

ここを泳ぎ下れるなんて夢見心地 オリンピックゴルジュ造形美自由形の優勝候補!

ブラボーです! これほどまでに均整に幾何学的な節理が発達したゴルジュは国内でもそう多くはあるまい。

素直に感動しました!!

この先には2段6mのスライダー滝が落ち込んでいる。

両岸が狭いので突っ張って、最後はジャンプでボイルの向こうにドボン! 気持ち良いところでした😍

M氏も続いてドボン!!

このすぐ下にも3mの滝があり、そこが実は一番の見どころで、右岸が水流に侵食され大きくハングしている 大袈裟に例えるなら舟ノ川・桶側の滝のような不思議な地形となる…

これはパナイっす!!マジパないっす!!砥沢川すごすぎる!! なんじゃこりゃ〜(笑)

何百、何千年という長い長い時間をかけて侵食した地形 人知を超越した何かを感じざるを得ない半洞窟状の滝

砥沢川の真髄はこのゴルジュ造形でしょう! 苦労して見に来てもお釣りが来るほどに非現実的な光景でした

しばらくここで風景鑑賞を楽しむ すごすぎるっしょこれ

本当に来てよかった〜 大川も最高だったけど砥沢川のゴルジュは圧巻すぎる!

アプローチが近かったら10回は行きたいような感じ(笑)

半洞窟状ゴルジュの先は一旦出口になっていて、そこも斜めに侵食された不思議な側壁の水路

やばたにえん!!と34回くらいは叫びまくった

一旦河原状になる ここは2011.7の水害で堆積し埋まってしまった区間だ

本来はどんなだったのだろうか?

元の姿に復活することはあるのだろうか?

直線状のゴルジュの河床には石ころが堆積してしまっている ここも昔は泳げたのかな?

ロンレ沢の出合に近づくと、再び泳ぎがある 光明滝と呼ばれていた滝の姿はもう無くなっており、この区間は水害前の記録と見比べると3〜4mは埋まってしまって水面が上昇している。 最後の最後まで造形美が途絶えることなく 興奮は冷めやらない。

ダムの超水量の多い初夏にはバックウォーターがこの辺りまで来るようだ

ロンレ沢出合では完全に河原になり、一旦水を汲む 50m下流にはバックウォーターがあり流木などが浮いている 流石にここから泳ぐと大変だ

猛暑に喘ぎながらダム湖左岸にある廃道(ほぼ完全に薮化している)を拾い、ダム湖の一番狭くなる箇所(5・60m)を泳いで渡る

こんな経験は滅多にできないw 途中足が攣りかけながらなんとか右岸側に泳ぎ渡ることに成功した!…!?

っちょ!!動物の腐乱死体!!! 泳ぎ渡ったそこには動物の腐乱死体が沈んでおり思わず絶句 間違いなく死体エキスが体に染み込んでいる

ま〜最近死体によく遭遇するので慣れてきたもんだ これも下田の山らしい顛末だろう。。

あとは往路と同じように、歩き難いダム湖横を歩いて帰るのみ 沢がある窪地は泳いでショートカットして無事にダム湖駐車場へ帰還した。

M氏とがっつり握手し、旅は終わった 最高の充実感だ! 3日間、大秘境下田の山奥にどっぷり浸かり、手つかずの大自然を堪能した

もう思い残すことはない

三日間の行程で最高高度は800mそこそこ そんな低山の沢旅でも感じる恐ろしく生々しい原始的なヤマ感 これが僕らの求めている「沢登り」だった。

この旅の成功も仲間のM氏あってのことだ 重ね重ね感謝したい所存である。

暑い暑い湖岸道歩き

大川の荒々しいgorge

取り逃がした鯉のような巨大イワナ

たかりまくってくるアブ・ヤブ蚊・メマトイ・ブヨ

小便、うんこを漏らしそうになった恐怖の西ノ沢

灼熱と豪雨 バテバテの山越え

美しい砥沢川のgorge world

生ぬるく仄かにドブ臭い 動物の腐乱死体の沈むダム湖横断

…それら全てが下田の山なのだな〜 最高に充実した三日間でした M氏お疲れ様でした!

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