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2021-10-24

御神楽岳 水晶尾根

2021.10.24

御神楽岳東面を流れる広谷川の流域は妖しい魅力に満ち満ちている。まだ未訪だが、山域で最も高名な御神楽沢を始め、御神楽沢奥壁、湯沢スラブなどは各地からの沢ヤ・アルパインクライマーに親しまれ(?)、栄太郎新道(蝉ヶ平ルート)は御神楽岳の一般登山ルートの中では特にハイグレードとして一定の人気がある。

そんな広谷川のあたりを地形図で見ると、湯沢の頭に突き上げる顕著な二つの尾根が目に付く。北側の山伏尾根、一つ南の水晶尾根…なんとも魅力的な名称のこれらの尾根は、藪山アルパインとして細々ながらも登られているルートである。

山伏尾根は栄太郎新道からもよく見える、山伏ドームによって尾根が分断されていて、当然ながら尾根を通すにはドームの登攀が必要になる。一方の水晶尾根は、本名穴沢の枝沢であるトマの左俣を使ったアプローチや、本名穴沢左俣のスラブから尾根の途中に乗るルートなどがあり、藪慣れしていれば楽しく登れそうなルートに思えた。

名の通り水晶が尾根上にあったりなかったりなんて記録もあって、自分の目で確かめてみたい欲望にかられる。また、尾根を取り巻く大スラブ帯の中にあるリッジを歩いたらさぞ気持ちがいいだろうなと考えていた。

今回はいつものM氏に加えて、中澤さんとwakaちゃんが来てくださった。久しぶりの中澤さんとの山行とあってはやはり会越がふさわしい! 

wakaちゃんのブログに山行記録の詳細なレポがアップ済みなので、こちらもドウゾ!

朝6:00 登山口で準備を済ましていざスタート。

駐車場から2.5kmほどは広谷川左岸側につけられたアップダウンの少ない登山道だが、時折危険を感じるトラバース道だったり、ヌメる沢の横断があり、なるほど確かにハイグレード登山道だ。。

そんなこんなで登山道との分岐になるスモヒラから広谷川へ入渓し、なるべく水に浸からないように用心しながら進んでいく。

V字谷の広谷川
急峻なラクダの窓沢が目を引く

広谷川へ入るのは初めてだが、発達したV字谷と威圧的な山容がミックスされなんとも息の詰まりそうな雰囲気だ。 ほどなく、左岸から圧倒的な高さから注ぐラクダの窓沢が出合う。山伏尾根へと継続されるルートだが、御神楽岳山岳史では重要となる珊瑚氏の遭難記など、何かとエピソードの多い沢のようだ。※湯沢の珊瑚クラックは珊瑚氏から取った名称だそう。

ゴルジュは左岸の巻道から高巻く
左の涸沢がトマの左俣、右が本名穴沢

グリーンタフの発達するゴルジュは左岸のドロドロの巻道から巻き、進んでいく。

その後巨岩帯の最中、左岸から数段の小ナメ滝で出合うのが本名穴沢だ。思っていたよりもちゃんとした沢で水流がある。出合から続く3.4の小滝を超えると、右岸から枯れたしょぼい沢が入る。どうやらこれが水晶尾根末端へ続くトマの左俣のようだ…

あまり積極的になれない様相だが、ゴーロの中に水晶がびっしりと生えている巨岩があり驚愕! やはり水晶は間違いなくあるんだ! 50m程度トマの左俣を登ると右手から水の滴るスラブが出会う。 山登魂の記録ではどうやらここを登っているようだ。この濡れたスラブから尾根末端にいくのが登山大系でも載っているルートだが、本名穴沢左俣スラブから取り付くfe_elさんルートも魅力的だ。こちらはスラブから尾根に乗るときに数ピッチのロープセクションがあることから4人では時間がかかると思い今回はトマの左俣からのルートを選択した。

濡れたスラブも簡単ではなく、斜度があるため右に左にと灌木を伝って登っていく。途中からは小尾根状になった灌木帯メインで登っていくが、尾根の末端と思われる部分が5mほど垂直に近い岸壁になっている。

今回最初のロープを使った場面で、まずは最近勢いが止まらないwakaちゃんが右手よりのルートから先行するが非常にボロく、一度スタンスもろとも崩れて2mほど落下、うまく着地したため幸い怪我はなかった。選手を番長M氏に交代し左手よりのルートから灌木にランニングを取り無理やり超えていった。後続もかなり辛いレベルの悪場だったが、なんとか全員通過した。そこは尾根の末端であり、幅1,5m程度の極細尾根と化した。

右手には本名穴沢のスラブ群が手に取るように俯瞰できる。尾根上は極端にボロく風化した部分があるので中澤さんがそのままロープを引いて安定した場所まで進む。目線直下にはfe_elさんルートのスラブが見えているが上部はかなりの斜度だ。こちらも一筋縄では行かなそうな感じ…

本名穴沢スラブと山伏ドーム
水晶尾根の末端はボロボロの細いリッジ

ようやく水晶尾根の主部に乗り上げることができた。ぶっちゃけ既に予想よりも数段疲れてしまった。。

が、ここにはたくさんの水晶が落ちていたり、石の側面にびっちりと水晶が生えたものがゴロゴロ落ちていて感動!!

水晶尾根の水晶
正面のピークが御神楽槍?

水晶尾根上はやや藪っぽく、松などの灌木が生えているが、背が低く藪こぎも全く苦にならない。

さっきまで晴れていたのに、いつの間にか分厚い雲に覆われてしまって残念この上ないが、ピラミダルなピークに向かってまっすぐ続く尾根風景は実に見事だ! 正面に見える小ピークが御神楽槍だろうか? スラブの傾斜が緩く、左側から巻くように超える。

左下に伸びるリッジから水晶尾根端部に乗る
圧巻の水晶尾根

いよいよ山伏の頭まで見渡せると、言葉にならないような荘厳な風景だ。右手には本名穴沢の大スラブ、天を突く山伏ドーム。左手には御神楽沢奥壁の伽藍が広がる。これはすごい…

岩稜は歩きやすい
ピラミダルな山伏の頭

尾根の岩稜部分は歩きやすく、快適に進む それにしても目を引くのは山伏ドームだ。 まさに異様

ピラミダルな山伏の頭の頂部まですっきりと続く本名穴沢の大スラブも良さそうだが、スラブの端部に100m近いような滝がかかりこのスラブを登るのは難しそうだ。登山大系に記載がある以外、記録も全く見ない。

あいにくの曇りとなった
怪しい雰囲気がまた良い
幅1mも満たない細リッジもある
尾根上で唯一のロープ

順調に進むも、間も無くズッとたった岩峰にぶち当たる。ここは古いハーケンやリングボルトがあり登路は右側から巻くように進む模様。 どんな流れでそうなったかは覚えてないが、M氏が登るのは当然の流れだったような気がする。

M氏は危うげなく簡単に登るが、最後がかなりのパワー系で肥大化著しい私には堪えるひと登りだった。

快適な尾根が続く
小ギャップは左から巻き下る

その後もギャップを左から巻き気味に通過する箇所に緊張したりとなかなかバリエーションぽさもある。

笠倉山をバックに振り返る
美しい尾根

ある程度のところまで登ってくると、背後の笠倉山に刻まれた幾筋の急峻な渓谷や、ム沢つばくろ尾根方面も見渡せる。御神楽岳東面の概念把握にはうってつけの尾根のようだ。

振り返る顕著な水晶尾根はとっても美しいものだ。 

みんなまだまだ元気だ
wakaちゃんの四足歩行に苦笑い

水晶尾根も終盤に差し掛かり、まるで戸隠の蟻の門渡りばりのリッジがある。 左右は切れているが特に怖くもないが、wakaちゃんは四つん這いで通過。そういえば序盤のリッジも四つん這いだったな(笑) みんなこれに大爆笑だった。

一瞬だけ本名穴沢スラブに移る
御神楽沢奥壁を見ながら休憩

山伏の頭が近づくときにややルーファイ気味に藪の少ない本名穴沢スラブ方面へ抜ける。 遥か眼下まで400mぐらいスラブが続いている。 滝がなければ、このスラブは快適なんだろうな〜

尾根に戻ると左手から御神楽沢付近から伸びる白く美しいスラブ「新高ルンゼ」の頂部と合流する。新高ルンゼ下部には雪崩による侵食の模様のようなものが刻まれていて、実に興味深い。 みなさん来年の秋は新高ルンゼどうでしょうか??

新高ルンゼの頂部
湯沢の頭へとうちゃこ

山伏の頭は実質湯沢の頭の偽ピークで10分ほど簡単な藪を漕ぐと湯沢の頭に出た!! 楽しかった!!

今回は少々時間がかかったが、大体の概念は把握できたし、念頭になかった新高ルンゼの発見もありとても充実した。時間不足でドローンは飛ばせなかったので、来年こそはと意気込んでみる。

下山は、例のハイグレード登山道だが、確かに普通の登山道よりは悪いけどいうほどのものでもなく、西上州周辺の藪山の方がよっぽど怖い登山道だ。薄暗くなりながらも湯沢奥壁を丁寧に観察し、車に着く頃には18:00真っ暗になってしまった。

湯沢奥壁
M氏採集の水晶尾根産水晶

久々の御神楽山荘でサクッと温泉の後は桃園楼!のつもりだったが、営業時間外に… いろいろ探したが空いている店もなくコンビニに。。  御神楽岳の魅力が一層深まった一日でした、中澤さん、wakaちゃん、M氏ありがとうございました!

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